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地方への転職に変化が?Uターン・Iターンの現状

ウィズコロナ時代のUターン・Iターンの今


「コロナショック」を契機に広がったテレワーク。働く場所の定義を考え直すきっかけとなったことから、地方への転職に対する関心が高まっています。

Uターン・Iターン転職はワークライフバランスを重視した働き方を叶える選択肢として、コロナショック以前から人気がありました。
また、企業にとっても都市圏で経験を積んだ即戦力人材が獲得できるメリットがあります。緊急事態宣言が解除された一方で第二波への警戒が続く今、地方への転職市場動向はどのように変化しているのか?地方から見た最新動向をご紹介します。

緊急事態宣言直後の新規求人は半減、ただし地域によってコロナへの意識にズレ


新型コロナウイルスの感染状況や政府・自治体の対応が報じられているのを、皆さんも目にされていることでしょう。ただ、都市圏とそれ以外の地域ではコロナに対する捉え方が少し異なることが求人動向から分かります。

4月中旬〜5月を振り返ると、新規の求人は一時的に半減しました。中でも感染者数が多い地域ほど、やはり警戒感が強いためか早く求人が止まったようです。半面、広島を中心とした中国地方のほうが求人の減り方は緩やかでした。また、京阪神の中でも京都だけは大阪・兵庫に比べて少し緊急事態宣言の対象地域になるのが遅く、それに伴って求人が減り始めるのも少し後でした。

宣言解除後の求人の戻り具合は業種によって変化あり


緊急事態宣言の解除後、求人数は回復してきていますが、1〜3月と同水準に戻っている地域もあれば、7割程度までしか戻っていない地域もあるなど、エリアによる違いが見られます。

大まかな見方としては、各エリアに集積する業種による傾向の違いだと言えます。例えば、京都に多い半導体・電子部品メーカーでは自動車向けの需要は下がっているものの5Gを含めた通信向けの需要は増えており、トータルで見ると求人数は年初の水準に戻りつつあります。他方、重厚長大と言われる製造業が多い神戸では、これらの業種のマーケットが停滞しているため、神戸エリアの求人数の戻りの鈍さに影響しています。

そのほかの業界では、工作機械などの製造業、外食、アパレル、サービス業などは大きな打撃を受けています。一方、地方には多くはないもののIT・Web関連、情報通信業は逆風を免れています。

ただ、業種だけを見ていればよいわけでなく、企業それぞれの経営基盤の強さによって求人の出方が異なっている部分もあります。例えば、自動車関連のマーケットは世界的な需要の落ち込みから、完成車メーカーだけでなくサプライヤーなどにもマイナス影響が出ています。しかし企業を個別に見ていけば、この時期でも将来に向けての先行投資とそれに伴う人材採用の手を緩めない企業もあり、求人数は回復傾向にあります。

企業の将来を見据えた重要度・緊急度の高い求人の採用熱は下がらず


中小企業に着目すると、電機・機械・化学系の製造業や消費財・食品メーカーなどを中心に、ほとんどの企業はコロナショックの影響を何かしら受けています。ただ、以前からの慢性的な課題として創業者・現経営者の高齢化に伴う事業承継の必要がある企業も多く、後継となる経営層・幹部候補の採用意欲は衰えていません。逆に他の企業の求人が少ない今の状況を、採用のチャンスと捉える企業もあるほどです。

職種・ポジションで見ると、企業のデジタル化を推進するソフトウェア系人材の求人は比較的減っていません。AI・IoT導入を担うデジタル人材だけでなく、システムの上流を担う企画系から、実際に構築するエンジニアまで求人は比較的豊富です。その他、研究開発など、将来に目を向けた時に必要なポジションも募集は続いており、企業の成長の中核となるような、重要度・緊急度の高いポジションの採用熱は総じて高い状況にあります。

リーマンショックの時はほぼ全業界の求人がストップしましたが、コロナショックの転職市場への影響はそれとは異なり、業種や企業それぞれの状況、求人職種・ポジションによって濃淡があると言えるでしょう。

都市圏から地方への転職活動は、焦らず長期戦の構えで


一方、転職希望者の状況はどうでしょうか。ステイホーム期間を機に多くの業務をリモートで行えることが分かった方の中には、「住むのは都市圏でなくてもよいのでは」と考え始めた人もいることでしょう。地方で暮らすことに目が向きつつある気運は感じられます。ただ、それがU・Iターン転職希望者として顕在化しているかというと、まだのようです。今後の状況が読めませんし、一定数は都市圏の企業に属しながら住居だけ地方に移そうとしているのかもしれません。

現時点では、コロナショックの影響は一時的ではなく長期にわたるという見方が強く、ここ数年のような「売り手市場」にすぐに戻るとは考えにくい状況なのは確かです。その意味で、転職が“不要不急”の人は今、焦って動く必要はないでしょう。

ただ、今いる企業では自分の希望するキャリアが実現できない、早く道筋を切り替える必要があるというケースもあるでしょう。そのような状況で地方への転職を考える方は、「活動を始めればすぐに転職先が見つかる」とは考えず、長期戦を覚悟しつつ情報収集しながら好機をうかがうのが望ましいやり方です。

いま市場に出てきている求人は企業の中核を担うポジションが中心


コロナショックの影響で全体の求人数は減っています。しかし逆の見方をすると、現在求人中の企業は、経営基盤が強く体力がある企業であり、少なくともコロナ渦でも今後の成長の絵図が描けている企業だと言えます。出てきている求人も、そうした企業の中核を担うポジションが中心です。

コロナを機に地方の企業もオンライン面接が主流になりました。少なくとも一次面接はオンラインで行う企業がほとんどなので、転職活動もしやすくなってきています。今のところはライバルも少ない状況ですから、少ない求人の中から良い求人に出会えれば、思い切ってチャレンジしてみるのもよいでしょう。

チャレンジすべきか否かの見極めに不安がある方は、信頼できるエージェントと相談しながら情報収集を進めるのも一手。そうしてマーケット感を養っておくことで、市場が改善した時の転職活動を有利に進められるはずです。

※本稿は執筆者の個人的見解であり、ジェイエイシーリクルートメントの公式見解を示すものではありません。

(2020年7月)

この記事の著者

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大石 昌弘

西日本拠点統括部長

立命館大学を卒業後、三井住友銀行に入行。その後、2005年に株式会社ジェイエイシーリクルートメントに入社。
当初は金融・不動産業界を担当した後、東京・大阪にて金融や製造業領域の部門長を務める。 直近では、関西圏及び中国・九州地方といったエリアを担当し、当該エリア企業の幹部クラスのポジションを中心に幅広く支援。