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コロナショックもお構いなし?【IT・通信関連】転職市場の今後

コロナショックを経ても、なお成長し続けるIT・通信業界の転職市場の今後


さまざまな業界がコロナ禍の影響を受けている中、IT・通信業界は活況を維持しています。
IT・通信業界のコロナショック前後の変化と、中長期的な転職市場の展望について解説していきます。

ITがあらゆる業界に浸透し、IT企業・非IT企業の垣根がなくなりつつある


IT・通信業界の転職市場の今後を見通す上では、前提としてコロナ以前からの業界を取り巻く大きな流れを押さえておく必要があります。

ここ数年で、IT業界と非ITの企業群の間にあった垣根が急速に低くなってきました。IT業界というのは、例えばシステムインテグレーター(SIer)やITコンサルティング企業、エンタープライズ向けのソフトウェアベンダーなどを指します。従来はこれらの企業が業界の成長を牽引してきましたが、そこに2000年代の後半頃からクラウドコンピューティングが登場し、Web経由でSaaS(Software as a Service)を提供する企業が国内外で多数出てきています。

一方、非ITというのはいわゆる事業会社です。事業会社において“テクノロジーが活用されていなかった領域”でのデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進み、非ITと呼ばれてきた企業にもITの要素が浸透してきました。事業会社はAI、IoT、ローカル5Gなどの先端的な技術を活用した新規ビジネスを拡大しつつあり、そうした動きに従来のIT業界、SIer・コンサルなどが企業のDXを支援する事業の立ち上げで応え、全体としてIT業界の成長を後押ししているような状況です。

事業会社のDX・新規事業関連求人はやや減るも、ベンダーの採用はむしろ活況に


そうした背景の上で起きたのが、今回のコロナショックです。コロナ以前のIT業界の転職市場には、事業会社におけるDX、新規事業開発に関わる求人が、ビジネス系・技術系問わず非常に多く出ていました。しかしコロナ禍の影響から、そのニーズは一時的にややトーンダウンしているような状況です。

対して、SIer・コンサルなどのベンダー側では、コロナ後を見据えた先行投資のような形で積極的に人材採用を進めています。一部、外資系IT企業についてはグローバルで採用をストップしているところもありますが、逆にこれを好機と捉え、採用を強化している日系IT企業もあります。

そのため、IT・通信業界へのコロナショックによる負のインパクトはほとんどなく、求人数もコロナ前と後であまり変わっていません。また事業会社の採用意欲も再び高まっており、転職市場全体としてみれば活況といってもよい状況です。

また転職希望者の方を見ても、コロナ禍だから転職活動を手控えるというような動きは出ていないようです。

求人ニーズが細分化され、「職務経験+業界知見」や新しい開発手法の知識が問われる


求人ニーズの詳細を見ても、コロナが要因で大きく変わっているケースはほとんど見受けられません。ただし、コロナ以前からのここ1、2年で、IT業界で求められる要件が上がってきており、それが継続していることは確かです。

その背景には、求人ニーズの細分化と多様化があります。数年前までは、求人職種というと、プロジェクトマネジャー(PM)、システムエンジニア(SE)、プログラマー(PG)などが主でした。

今もこの求人職種自体は変わっていませんが、例えばPMの中でも、アジャイル型開発ができるPM、ウォーターフォール型のPM、あるいはAI開発プロジェクトのPM、IoTのPMというように、開発スタイルや扱う技術、何をつくるかによってポジションが細分化されています。そして、ポジションごとに求められるスキルや経験値、業界に対する知見などが異なり、マッチングの難易度が上がっているというわけです。

この流れは将来的にも続いていくか、さらに細分化が進む可能性もあります。例えば、データサイエンティストの求人であれば、データサイエンティストとしてのスキルに加えて、「製造業の経験がある人」「マーケティングの知見がある人」といった形でより具体的な業界の経験・知見を問われるようになるでしょう。

自らアンテナを張り、先々の市場で求められる知識・経験を身につける


より職種が多様化し、かつ企業は高い専門スキルを求める時代になってきたからこそ、戦略的に経験を積み上げ、知識・スキルを身につけていく必要がありそうです。

最近では「人間中心設計(HCD=Human Centered Design)」「アジャイル開発」「デザイン思考」などのような新しい開発手法・プロセスに関する知識や経験を求める企業が増えてきています。こうした知識・スキルは、消費者のITリテラシーが高まり続ける現代において一過性のものではなく、継続的に求められるものでしょう。
例えば、これまでウォーターフォール型の開発経験しかなかったとしても、スクールで新しい手法を自ら学んで認定資格を取得し、そこで得た知識を現職で使っていけば、数カ月後には、その経験を活かせる事業会社へ転職することは十分に可能な状況です。

足下のニーズだけでなく、先々の市場でどのような知識・経験が求められるのか。それを、自らアンテナを張ってキャッチしていくことが、転職に際して幅広い選択肢を得るためには必要になってきます。

スクールで知識を学ぶ以外にも、副業や技術者のコミュニティでの勉強会など、知識を広げる場とそれを実践する機会は開かれています。それをいかに組み合わせれば、なりたい自分、築きたいキャリアに近づけるのかを戦略的に考えることが、今後ますます重要になってくるはずです。
※本稿は執筆者の個人的見解であり、ジェイエイシーリクルートメントの公式見解を示すものではありません。

(2020年9月)

この記事の著者

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川口

IT業界専門 リクルートメントコンサルタント

2006年に新卒入社。ITディビジョンにて大手システムインテグレーターや外資系ソフトウェアメーカーを担当。
その後通信領域を専門で担当するチームの立上に従事し、大手通信事業者や外資系ネットワーク、通信機器メーカーを担当し、2012年よりITディビジョン通信・ネットワークチームのマネージャーとして従事。

2018年からはデジタルディビジョンのプリンシパルコンサルタントとして、主に事業会社、並びにコンサルティング企業のDX推進、DXコンサルタントポジション並びに、AI/IoT領域のシリーズb〜シリーズcフェーズのテック系ベンチャーを数社担当。